予防ワクチン・予防薬の開発・市場動向について調査結果発表

2015-10-01  /  プレスリリース

~予防医療の実現を目指したワクチン・予防薬の方向性は~

調査結果のポイント

  • ワクチンの性状は多種多様であるが、今後はタンパクワクチン(不活化ワクチン)が伸長
  • ワクチン市場は肺炎球菌やインフルエンザワクチン、HPVワクチンが牽引
  • ワクチンの安全性向上のため接種対象者を個別化できる技術の開発が望まれる

 メディカル・ライフサイエンス分野のリサーチ・コンサルティングを専門に行う株式会社BBブリッジ(東京都港区、代表取締役 番場聖)では、予防医療の実現のために重要な予防用ワクチン及び予防薬(※1)について、研究開発の動向や市場動向、今後の方向性について調査・分析を行い、その結果を発表しました。調査結果のポイントは以下の通りです。

1.ワクチンの性状は多種多様であるが、今後はタンパクワクチン(不活化ワクチン)が伸長

 ワクチンの性状は以下のように区分することができます。最も古くから使用されているのは弱毒株(生ワクチン)であり、現在でも多くのワクチンに使用されています。一方、近年では遺伝子工学技術やアジュバント(※2)技術の発達により、病原菌やウイルスから抗原となるタンパクを取り出してワクチンとして利用する(不活化ワクチン)ケースが増加しています。不活化ワクチンは安全性に優れ、製造も比較的容易であるため、今後さらに伸長すると思われます。弱毒株やタンパク以外ではウイルスベクターを用いたDNAワクチンなどの開発も進められており、実用化が期待されています。
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2.ワクチン市場は肺炎球菌やインフルエンザワクチン、HPVワクチンが牽引

 世界の予防用ワクチンの市場構造(2014年)は以下の通りです。ワクチンは疾患によって販売価格の差が大きいので、売上でみる市場構造と投与数(接種数)でみる市場構造は大きく異なります。売上でみる市場構造は欧米で高齢者に積極的に使用されている「肺炎球菌」がもっとも大きく27%を占めています。次いで「ジフテリア・百日咳・ポリオ等」の混合ワクチンが20%、「インフルエンザ」は16%を占めています。インフルエンザワクチンはパンデミックの発生や各国の備蓄政策によって売上が大きく左右されます。HPVワクチンは先進国における利用率の向上によって今後も市場を拡大させるものと予測されます。
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3.ワクチンの安全性向上のため接種対象者を個別化できる技術の開発が望まれる

 ワクチンは多くの健常者に接種されますが、ある一定の人には効果が全くなかったり、稀に重篤な副作用(副反応)が生じる場合があります。日本でもHPVワクチンの重篤な副作用が問題となっており、原因究明が急がれます。ワクチンは乳児や小児など若い健常者が投与対象となるため、安全性の確保は最も重要です。
 このような重篤な副作用を避けるためにワクチンの個別化投与技術の開発が必要です。具体的には副作用が生じた対象者の状態や病歴・ゲノム情報や生活などを総合的に解析することで、副作用と関連性のある因子(マーカー)を見つけるなどが想定されます。この因子を今後のワクチン開発に活かしたり、現在使用されているワクチン投与の際の禁忌とすることで、重篤な副作用を回避できる可能性があります。
 一方で仮に副作用に関連する因子が見つかったとしても、ワクチン接種現場において血液検査などを都度行うことは現実的ではありません。望ましい技術としては血液のような検体採取が必要がない病歴や感染症罹患歴など問診で確認できる項目、もしくはその場で結果がわかる簡単で安価なパッチテストなどが理想的です。また、遺伝子検査でも生殖細胞系列のゲノム配列情報であれば一生に一度の測定で良いため、ワクチンの副作用と関連性があれば利用できる可能性があります。
 ワクチンの安全性向上のため接種対象者を個別化できる技術は、今後もワクチンを広く使用していく際に重要であり、アカデミアや企業による積極的な研究開発が望まれます。

 なお、本調査は㈱BBブリッジが作成した技術・市場調査レポート「世界の予防用ワクチン・予防薬開発の最新動向と将来展望(2015年9月30日発刊)」において実施されたものです。詳細についてお知りになりたい方は当該レポートをご参照ください。
 

用語説明

※1 予防薬
本調査における予防薬の定義は「健常者(特定疾患への罹患高リスク者含む)に対する医薬品」、もしくは「ある疾患の患者に対し、異なった疾患の予防のために使用される医薬品(例:がん患者における感染症予防)」としています。従いまして、がん治療を受けた患者に再発を防止する目的で投与される予防薬や、脳梗塞治療を受けた患者に再発を防止する目的で投与される予防薬などいわゆる再発予防薬は対象としておりません。(これら再発予防薬は既に通常の医薬品として広く利用されています)
※2 アジュバント
免疫反応を増強させる物質の総称でワクチンと一緒に投与されます。最も多く利用されているアルミニウムアジュバントが有名です。

なお、本プレスリリースの内容について無断利用・転載は禁止します。

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