【小野薬品工業がCAR-T開発に参入】BBブリッジ メールマガジン No.29

2016-07-12  /  メルマガバックナンバー

 オプジーボの開発成功で業績を伸ばしている小野薬品工業が、他家細胞
を用いたCAR-T開発についてベルギーのベンチャーCelyadとの提携を発表し
ました。

【7月11日 小野薬品工業プレスリリース】
 https://www.ono.co.jp/jpnw/PDF/n16_0711.pdf

 小野薬品が日本・韓国・台湾での独占的開発・商業化権を取得したのは
ナチュラルキラー細胞受容体 NKG2D を用いた他家CAR-T 細胞 NKR-2(非臨
床試験段階)です。
 通常のCAR-Tの場合、T細胞上にがん抗原に対する抗体断片を発現させま
すが、本開発品はNK細胞受容体NKG2Dを発現させます。これによりがん細胞
上に発現しているNKG2Dリガンドと結合することで、T細胞の細胞活性シグ
ナルをオンにし、抗腫瘍効果を発揮します。
 さらに詳細は割愛しますが、TCRを阻害する技術を同時に利用することで
免疫拒絶反応を抑え、他家細胞による治療を可能にしています。
 小野薬品は契約一時金として 12.5 億円、目標達成に応じたマイルストン
として、合計で最大 300.75 億円、上市後は売上高に応じた二桁台の料率の
ロイヤルティを支払うという条件です。

 CAR-Tは血液がんに高い効果を得たことから2014年度以降大手製薬企業が
次々に開発に参入しています。製薬企業にとってCAR-T事業化の最も大きな
課題の一つが、患者由来の細胞を用いるためオーダーメイドの製造が必要
であることでした。これに対し他家細胞を用いることができれば既存薬の
ような供給が可能になります。
 現在、他家細胞によるCAR-T開発は、第2世代のゲノム編集技術TALENを
活用したCellectisの候補品UCART19(フェーズI段階)が先行しています。

 また、先月には第3世代のゲノム編集技術であるCRISPR-Cas9とCAR-Tを
組み合わせたUniversity of Pennsylvaniaによる世界初の臨床試験の実施が、
米国FDAによって許可されました。これはCRISPR-Cas9によってT細胞のPD-1
とTCRの発現を抑制することで、より効果が高く安全なCAR-Tを開発しようと
いうものですが、TCRを標的としていることから、最終的には他家CAR-Tへ
の展開も十分に考えられます。

 このようにCAR-T開発は非常に注目されており、多くの技術開発が進んで
いますが、解決すべき課題も多くあります。最も大きな課題は副作用のコン
トロールです。
 
 先週、CAR-T開発で先行するJuno Therapeuticsが実施しているJCAR015の
フェーズII試験(ROCKET Trial)について、被験者2名が投与後に死亡した
ため、米国FDAからクリニカルホールドが命じられました。

【7月7日 Juno Therapeuticsプレスリリース】
http://goo.gl/7dSznM

 患者死亡の原因はまだわかっていませんが、死亡した2名はいずれもCAR-T
の投与前の前処置としてシクロホスファミドに加えてフルダラビンも投与さ
れていました。Juno Therapeuticsは前処置としてシクロホスファミドを単独
使用することで臨床試験の再開をFDAに求めていくとしています。
 このクリニカルホールドによってJuno Therapeuticsの株価は40米ドルから
1日で27米ドルまで急落しました。
 
 CAR-Tは次世代がん治療技術として期待を集めており、今後、各企業がど
のような戦略で開発を進めるか、注目されます。

 BBブリッジではCAR-T/TCRについて、研究開発やビジネス動向をまとめた
レポートを2016年1月に発刊し、調査結果を公表しています。ご興味がある
方は以下をご参照ください。

【技術・市場レポート】
 T細胞遺伝子改変療法(CAR-T/TCR)開発の最新動向と将来展望
 
【プレスリリース】
 T細胞遺伝子改変療法(CAR-T/TCR)の開発について調査結果を発表

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(1)T細胞遺伝子改変療法(CAR-T/TCR)開発の最新動向と将来遠望 

(2)世界の予防用ワクチン・予防薬開発の最新動向と将来展望

(3)医療経済評価を取り入れた医薬品開発の最新動向と今後の方向性

(4)バイオ医薬品製造技術の最新動向とビジネス展望

(5)予防医療・セルフケア時代の個人向け検査/診断ビジネスの最新動向と将来展望

(6)世界の遺伝子医薬品開発の現状と将来展望

(7)世界の細胞医薬品開発の現状と将来展望

(8)マイクロバイオームを利用した医薬品・診断技術開発の最新動向と将来展望

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【7月11日】日本橋ライフサイエンスプロジェクト

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