細胞医薬品の研究開発およびビジネス動向について調査結果を発表

2017-03-08  /  プレスリリース

~製品化が進む細胞医薬品の最新動向と展望~

調査結果のポイント

  • 免疫細胞を用いた細胞医薬品の開発が増加
  • 疾患領域により開発進展や開発中止の比率は大きく異なる
  • 細胞医薬品に適した医療システムの検討が必要

 ライフサイエンス・メディカル分野のリサーチ・コンサルティングを専門に行う株式会社BBブリッジ(東京都港区、代表取締役 番場聖)では、iPS細胞などを用いた医療応用が期待されている細胞医薬品について、研究開発の最新動向や世界の開発企業の動向、細胞医薬品に関するビジネス動向や今後の方向性について調査・分析を行い、その結果を発表しました。調査結果のポイントは以下の通りです。

1.免疫細胞を用いた細胞医薬品の開発が増加

 細胞医薬品として利用される細胞は「体性幹細胞」(間葉系幹細胞など)や「体細胞」(軟骨細胞など)など多様です。現在、開発が進められている細胞医薬品において、利用されている細胞の種類について調べました。
その結果、最も多く利用されているのは「免疫細胞」(T細胞や樹状細胞)であり、全体の42%を占めていました。免疫細胞を用いた細胞医薬品が増加している理由として、CAR-T(遺伝子改変T細胞療法)に代表されるがん免疫療法としての研究開発が急増していることが挙げられます。また、免疫細胞は血液から採取できるため利便性が高いという特長もあります。
 一方で、「体性幹細胞」を用いた細胞医薬品も様々な疾患領域で開発が進められています。細胞医薬品として利用される細胞は、「免疫細胞」と「体性幹細胞」を中心に進むことが予想されます。

2.疾患領域により開発進展や開発中止の比率は大きく異なる

 BBブリッジでは2014年11月に技術調査レポート「世界の細胞医薬品開発の現状と将来展望」を発刊しています。今回、各開発候補品の2014年時点の開発状況と2017年の開発状況を比較分析し、2014年時点の候補品が2017年時点でどのような開発状況になったのかを追跡調査しました。
 この結果、例えば疾患領域D(レポートでは疾患名を記載)は開発進展率が高いですが、一方、疾患領域Iでは開発進展した候補品がありません。疾患領域によって開発進展や開発中止・中断の比率が大きく異なることが明らかになりました。
 このような傾向は使用細胞の違いや細胞加工技術の違いにおいても確認されました。開発成功率や開発中止・中断比率などのデータは、パイプラインマネージメントの観点から非常に重要です。疾患領域や開発段階、使用細胞や加工技術それぞれのデータを保有しておくことで、研究開発へのより効率的な投資が可能です。

3.細胞医薬品に適した医療システムの検討が必要

 細胞医薬品は従来の医薬品では難しかった疾患の治療、特に根本治療が可能になると期待されています。2010年以降、日米欧の主要国で承認された細胞医薬品は増加傾向にあり、開発後期のパイプラインも多いことから、2020年以降は製品数が大きく増加すると期待されます。
 一方で、現状の細胞医薬品の市場は非常に小さく、開発投資を行った企業の投資回収もままならない状況です。細胞医薬品の現在の市場があまり成長していない理由の1つとして、各国において保険適用が進んでいないということがあります。細胞医薬品は画期的医薬品であり、開発リスクや製造コストも通常の医薬品と比べて非常に高い状況です。このため、開発企業としてはある程度高い価格(薬価)を付けざるを得ないですが、この高額な価格のため各国で保険適用が進んでおらず、医薬品として普及が進んでいない現状があります。
 近年では我が国においても高額医薬品の問題が取り上げられ、2016年より医療経済評価の試験的導入も始まりました。医療経済評価は細胞医薬品のような従来にない画期的な医療技術の評価手法として非常に重要です。一方で、1回(もしくは数回)の治療で長い期間治療効果を得られる可能性がある細胞医薬品に対し、正確な医療経済評価を行うことは容易ではありません。
 医療経済評価も含め、細胞医薬品の価格設定や保険適用のための新しい医療システムが求められます。このような医療システムが整備されることで細胞医薬品の普及・利用が進み、開発企業は投資回収ができるようになることで、さらに新しい細胞医薬品の研究開発を進めることができます。

 なお、本調査は㈱BBブリッジが作成した技術・市場調査レポート「2017年版 世界の細胞医薬品開発の現状と将来展望」において実施されたものです。詳細についてお知りになりたい方は当該レポートをご参照ください。

なお、本プレスリリースの内容について無断利用・転載は禁止します。

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