【使い捨てナノポアシーケンサーの実力とビジネス展開】BBブリッジ メールマガジン No.19

2015-09-14  /  メルマガバックナンバー

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   ◆BBブリッジ メールマガジン No.19  2015年9月14日◆
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 先週参加したゲノム創薬・医療フォーラムで、ナノポアシーケンサーを
開発中のOxford Nanopore Technologies Gordon Sanghera氏(CEO)と
John Milton氏(CTO)のお二人と、専用アプリケーションの共同開発をし
ている東京大学新領域創成科学研究科 鈴木 穣教授の話を聞く機会があ
りました。
 Oxford Nanoporeはナノポアを用いたライター程の大きさのシーケンサー
「MinION」を開発、昨年より本格販売しています。MinIONはマイクロ流路
とナノポアを用いており、日本での販売予定価格は10万円程度です。
性能は1万本の塩基配列が最大読み取り長10kbまで取得できます。
(詳細は同社HPでご確認ください) https://www.nanoporetech.com/

 DNA解析装置としてMinIONが面白いのは、USB接続したMinIONの生データ
はすべてOxford Nanoporeが提供しているクラウド上で解析され、解析結果
がユーザーにオンラインで送付されるという点です。即ち、ユーザがシー
ケンスデータを得るにはすべてOxford Nanoporeを介する必要があり、オン
サイトでシーケンスデータを得ることはできないということです(鈴木先生
の話では解析プログラムはオープンソースなので、やろうと思えばできなく
はない)。
 従ってOxford Nanoporeのビジネスは従来の検体解析のように装置や試薬
の販売だけではなく、データ解析を主な収益源とすることが予想されます。
例えば感染症のシーケンス場合は○○円、がん解析の場合は△△円など、
解析するデータの種類や量によって課金型の解析メニューを揃えておくこと
なども想定されます。
 鈴木先生がアプリケーション開発のフィービリティとして取り組んでいる
のは感染症(デングウイルスの血清型の迅速診断)およびがん遺伝子変異検
査です。デングウイルスの血清型診断では感染発生現場での利便性を高める
ため、試薬類をすべて乾燥化したRT-LAMP法(栄研化学が開発した等温遺伝
子増幅法)を利用し、デングウイルスの4種の血清型をほぼ100%ので確率
で決定することができています。
 MinIONの課題は塩基の読み取り精度で、現状では80%前後に留まります。
SNP(1塩基多型)解析のような用途は難しいが、がん遺伝子検査の場合の
対象となる遺伝子の欠失や再構成など大きい範囲の遺伝子解析であれば十分
に実用に耐えうるとのことでした。
 さらに同じ部位の配列を何度も繰り返してシーケンスし、個々の塩基配列
情報を補完的に集約することで、読み取り精度は95%以上に向上させること
もできるとのことでした。

 MinIONの価格については1~2年で1/3程度に下がるとも言われており、
前述のように課金型のビジネスを本格展開するのであれば、MinIONの価格や
販売方法には様々な選択肢があります。
 MinIONのような複雑な操作を必要としない簡便なシーケンサーが普及すれ
ば空港や感染症の流行地、または家庭で手軽にシーケンスとデータ解析がで
きるため、様々な市場が生まれる可能性があります。シーケンサーが一家に
1台普及することも夢ではありません。
 一方で例えばがん遺伝子検査はMinIONで実施する必然性は低く、医療機関
で次世代シーケンサーを用いて集約的に行う方がコストと検査精度の面で適
しています。目的によってシーケンサーの棲み分けが行われると思います。

※ 本メールマガジンに関するお問い合わせはご遠慮願います。
※ 当社はMinIONを取り扱っておりません。

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