T細胞遺伝子改変療法(CAR-T/TCR)の開発について調査結果を発表

2016-01-14  /  プレスリリース

~遺伝子改変T細胞療法によるがん治療の方向性は~

調査結果のポイント

  • T細胞遺伝子改変療法はCAR-Tを中心に開発が進む
  • 再生・細胞医療市場において、CAR-T/TCRは市場をけん引することが期待
  • 副作用のコントロール技術が普及拡大のカギとなる

 メディカル・ライフサイエンス分野のリサーチ・コンサルティングを専門に行う株式会社BBブリッジ(東京都港区、代表取締役 番場聖)では、がん治療の最先端技術として世界で注目されているT細胞遺伝子改変療法(CAR-T/TCR※1,2)について、研究開発の動向やビジネス動向、製品化の今後の方向性について調査・分析を行い、その結果を発表しました。調査結果のポイントは以下の通りです。

1.T細胞遺伝子改変療法はCAR-Tを中心に開発が進む

 T細胞遺伝子改変療法は主に欧米のベンチャー企業によって開発が進められています。この開発動向について開発品の種類別でみると、「CAR-T」が最も多く58%を占めていました。次いで「TCR」が27%でした。「その他」は15%であり、内訳としてはNK細胞とCARを組み合わせた細胞療法や、T細胞に抗体のFc部位に結合するCARを発現させてその後に抗体医薬品を投与するという開発品などが含まれていました。
 T細胞遺伝子改変療法の開発には欧米の大手製薬企業も続々と参入しており、今後の開発品増加が期待されます。

T細胞図表1

2.再生・細胞医療市場において、CAR-T/TCRは市場をけん引することが期待

 T細胞遺伝子改変療法は現在注目されている再生・細胞医療の中でも最も早くかつ大きな市場を形成すると期待されます。T細胞遺伝子改変療法が大きな市場を形成する根拠として、(1)がん領域は治療満足度が低く、効果が高ければ高い薬価が得られること、(2)患者を対象とした複数の臨床試験で高い効果が既に証明されていること の2点があります。米国FDAからbreakthrough therapy※3の指定を受けている開発品も複数あり、早ければ2016年度中に製品が上市される可能性もあります。血液がんに対する抗体医薬品や分子標的薬が1製品で年間数千億円の売上がある製品が複数あることを考慮すると、CAR-T/TCRでも同等かそれ以上の市場を期待できます。
 では一体どの程度の市場を形成するかについて、実際に製品が上市されていないため正確な予測は難しい状況です。CAR-T/TCRは血液がんで優れた効果を示していますが、血液がんは患者数が少ないため、CAR-T/TCRの市場拡大には固形がんでの適用拡大が必要です。
 いずれにしてもCAR-T/TCRは再生・細胞医薬品市場において最も早く、かつ大きな市場を形成することが期待できるため、今後も参入企業による開発競争がさらに激しくなるものと思われます。

3.副作用のコントロール技術が普及拡大のカギとなる

 T細胞遺伝子改変療法の最大の課題は副作用のコントロールです。特にCAR-Tはサイトカイン放出症候群や腫瘍崩壊症候群、on-target off-tumor toxicity※4など強い副作用があることが臨床試験で確認されています。
 副作用のコントロールはCAR-T/TCRを医療現場で広く活用するために非常に重要です。副作用が上手くコントロールできれば、使用対象患者数の拡大やがん以外の疾患への広がりも期待できます。さらに他家細胞(ドナー由来)のCAR-T/TCRの実現においても副作用対策は重要です。
 現在、開発ベンチャー企業各社では副作用のコントロールのために様々な技術の開発を進めています。主な技術について以下まとめました。
T細胞図表2

 なお、本調査は㈱BBブリッジが作成した技術・市場調査レポート「T細胞遺伝子改変療法(CAR-T/TCR)開発の最新動向と将来展望(2016年1月12日発刊)」において実施されたものです。詳細についてお知りになりたい方は当該レポートをご参照ください。
 また、BBブリッジでは本レポートの更新版として、「2018年版 遺伝子改変T細胞療法(CAR-T/TCR)開発の最新動向と将来展望」を2018年1月に発刊しました。詳細につきましては当該レポートページから内容をご確認ください。
 

用語説明

※1 CAR-T
キメラ受容体遺伝子改変T細胞療法(Chimera Antigen Receptor T-cell therapy)とも呼ばれ、がん細胞上の特定の抗原に対するキメラ受容体をT細胞に発現させる。このT細胞を患者に投与することで治療を行うというもの。
※2 TCR
T細胞受容体療法(TCR療法:T Cell Receptor Therapy)とも呼ばれ、がん細胞上のHLA(ヒト白血球型抗原)とそのHLAに提示された抗原ペプチドに対するTCRをT細胞上に発現させる。このT細胞を患者に投与することで治療を行うというもの。
※3 breakthrough therapy
米国FDAが創設した革新的な治療法に対する開発支援制度。breakthrough therapyに指定されれば、承認取得までに数々の支援が米国FDAから受けられます。
※4 on-target off-tumor toxicity
がん細胞だけでなく正常細胞にも一部の標的抗原が発現していることにより、CAR-Tが正常細胞を攻撃することで引き起こされる副作用のこと。

なお、本プレスリリースの内容について無断利用・転載は禁止します。

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