【ブレークスルーセラピーの実情】BBブリッジ メールマガジン No.11

2015-04-30  /  メルマガバックナンバー

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◆BBブリッジ メールマガジン No.11  2015年4月30日◆
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新規レポートのご紹介などを目的に月2回程度お送りしております。

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先日、ドイツでのカンファレンスに参加した際にブレークスルーセラピー
(以下BT)制度を利用したバイオ医薬品の承認取得について、Rocheの担当
者の講演が興味深かったので紹介します。
BTは2013年米国FDAが導入した医薬品の新規承認制度であり、従来にない革
新的な医薬品(優れた効果もしくは副作用低減など)について、FDAの全面
的協力の下で迅速に承認するという制度です。

米国FDAが持つ類似の制度としてはオーファンドラッグ指定や優先審査指定
がありますが、BTは指定を得るため例え少数でも臨床データが必要である
点が大きく異なります(前述の2つの制度は非臨床段階でも利用可能です)。
BTに指定されれば経験のある審査官も含めたチームがFDA内に作られ、早期
承認取得に向けて全面的な協力を得られます。
実際にどの程度開発期間が短縮されるかは臨床開発のどの段階でBTの指定を
受けるか、指定後FDAがどのような臨床データを要求するかによりますが、
上手くいけば通常の半分程度の臨床開発期間で承認取得が可能になります。

BT制度は米国のがん研究・支援のNPOであるFriends of Cancer Research
(FCR)を中心とする働きかけにより創設されました。現在、300近い開発品
(上市品の適用拡大含む)がBTとして指定され、23製品が上市されています。
BTの指定には臨床データが必要であるため、健常者ではなく患者を対象と
するフェーズI試験が多いがんや希少疾患、感染症での指定が多くなって
います。
なお、BTの概要や、指定されている開発品、統計データについては以下の
FCRのサイトに詳細が記載されていますので、興味がある方はご覧ください。
http://www.focr.org/breakthrough-therapies

実際にRocheの担当者は2013年11月にBTの制度の下で初めて承認された
Gazyva(糖鎖改変を行った第二世代の抗CD20抗体)の経験を基に、BT制度
を用いた承認取得の実情について講演していました。ちなみにGazyvaは
BT指定から承認取得までわずか6か月間しかかかっていません。

BT制度を活用した早期承認取得のカギはプロセス開発です。特にバイオ医薬
品の場合は製造プロセス開発に時間がかかるため、製造プロセスの開発を
如何に迅速・正確に終了できるかが重要です。例えば通常フェーズIII試験
完了までに行っていた製造プロセス開発をフェーズII終了までに全て
完了させなければならないというものです。BTを活用する際にはプロセス
開発に強いバイオCMOとの協業も有効です。

また承認審査段階のFDAとのやり取りも非常に大変で、例えばRocheの担当者
は金曜にFDAから照会事項があり、その返答を水曜までに行うことを何度も
繰り返していたとのことでした。もちろんその期間は休みも取れず、関係者
が休日返上で働くことになると話していました。
一方、BTに指定されることで当該医薬品を一刻も市場に出すためにFDA関係
者が積極的に協力してくれるため、このような機会は医薬品開発側にとって
非常に貴重であるとも話していました。

このように製薬企業にとって大きなメリットがあるBT制度ですが、日本の
製薬企業では、武田薬品の再発・難治性の全身性ALアミロイドーシス治療
薬Ixazomibが2014年12月にBTの指定を受けています。また、BMS/小野薬品
によって開発されたNivolumab(抗PD-1抗体)も2014年9月にメラノーマを
対象にBT指定を受け、その後承認されています。

日本では類似の制度として先駆け審査指定制度があります。本制度は海外でも
承認されていない医薬品を対象としているため、実際に本制度を利用するのは
主に国内の製薬企業を想定しているものと思われます。
先駆け審査指定制度はまだ開始されたばかりですので、この制度がどのように
運用されるのか、注目されます。

注:2015年10月30日 内容の一部修正を行いました

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